第1話 名コンビ誕生?

  ライン


なぜだかふっと目が覚めた。枕のまわりに手を伸ばして時計を探す。 「――7時!?」 オレは飛び起きた。確かに昨日の夜、6時とセットしておいたはずなのに、 時計の針は間違いなく7時を指している。 時計が壊れたことを願いながら、オレは勢いよくカーテンを引いた。 「寝坊だっ!!」 そう気づいたとたんに心臓がバクバク鳴りだした。いつもはちょっとやそっとの事 じゃあ驚かないオレだが、今日は別だ。何てったって今日は大会の日なんだから。 オレはマッハで着がえた。 靴下とズボンとシャツを同時にはいた。 一体どうやってはいたのか自分でも分からないが、とにかく一瞬で着がえ終わると リビングへロケットダッシュで飛んでいった。 「ジュリー!! 何で起こしてくれなかったんだっ!! 今日は大会だって言っただろう?」 オレはテレビを見ながらコーンフレークを食べている彼女に怒鳴った。 『今ならまだ十分平気よ。 むしろ退屈な開会式に出なくて済むわ』 「その開会式でオレ達は選手宣誓をするんだよっ!!」 ジュリーは開会式・閉会式の類いが大嫌いなのだ。 でもそんな好き嫌いになんて 今は構っていられない。 オレは食パンを強引に口の中へ押しこむと、愛用のリュック サックを背負った。ジュリーもしぶしぶ立ち上がった。 「今日は競輪選手並に速く行くからな」 『クルマがないって不便ね』 いつもなら健康には自転車の方がいいんだ≠ニでも言い返すところだが、 今日は健康よりも時間の方が大切だ。オレは無言でペダルに足をおいた。 「ハァ、ハァ……ハァ……つ……着い……たぁ〜」 情けない歓喜の声を漏らしてオレは草の上にへたりこんだ。 『意外と早く着いちゃったみたい。 まだ開会式やってるわよ』 「オレはもう疲れた。 おまえ一人で選手宣誓してこいよ」 オレは本気で言った。 本当にくたくただったのだ。 ジュリーは選手達が集まって いる広場を少し見やると嬉しそうな顔をした。 『ラッキー! 丁度代わりが出てきたわ。これで選手宣誓はしなくてもいいわね』 そう言うとジュリーは草の上に寝転がった。 うっとりと目を閉じる。  これから昼寝でもしそうなカンジだ。 ジュリーは色が白い。 パールピンクのキレイな肌にピンクの爪、唇……。目は黒で くりっとしていて愛らしい。  彼女はオレの仕事のパートナーで、もう一緒に暮らして 三年になる。だが、オレ達は恋人同士だとかそういうものではない。   オレは彼女と出会ってから今まで、一度も彼女にときめいたことはないし、彼女も同じだ。 ――なにせ彼女はブタである。 これは悪口なんかじゃなく、本当に彼女はブタなのだ。   ブタ…………そう、英語で言えばpig≠ノあたる本物のブタだ。




back next

枠top枠novel枠