第10話 修羅場?

  ライン


「……ンディ……ランディ……ねぇ、インターフォンが鳴ってるわよ」 アリスに起こされてはじめて、ピーンポーン≠フ音を聞いた。  よっぽど熟睡していたらしい。 「こんな朝っぱらから誰だよ……」 しぶしぶベッドからおりようとすると、急に呼び鈴の音が止まった。 「あれっ? もう帰ったのかよ。 せっかく起きたのに……」 何だかひどく損をしたような気がする。 電話なんかでもやっと取ってもしもし≠ニ言った 瞬間に切れたりすると、ものすごく損をした気になるのと同じ原理だ。 「ねぇ、洗面台かりてもいい? すっかり目が覚めちゃった」 アリスはオレがいいよ、と言う前にさっさと洗面台の方へ歩きはじめる。  すると突然、ガチャッという音がして、玄関のドアが開いた。 入ってきたのはミシェルとロイで、 インターフォンを鳴らしてもオレが起きなかったためにカギで開けたようだ。 ここはもともと ミシェルの家だから、カギを持っていてもおかしくない。  ミシェルは、ちょうど玄関の前を通過したアリスと鉢合わせた。 「あっ!! あなたはこの前の……!!」 「…………」 そう言ったきり二人は固まってしまった。 どうやら二人は顔見知りだったようだ。  しかも察するにこれはできれば避けたい再会だったに違いない。 アリスは後ろ姿だけしか 見えないが、ずっと沈黙を通している。 「…………」 ミシェルが何も言わずにオレを睨んだ。 その目はこの上なく冷ややかで、かつ、怒りの炎で 煮えたぎっていて、オレには弁解の余地など全くなさそうだ。 ミシェルはくるりと方向転換 するや否や、すさまじい轟音と共にドアを閉めて出て行ってしまった。 「追いかけないの?」 「今行ってもオレの話なんか聞いてくれないだろうからね。 それにこんな格好見られたら、何 言ったって信じないよ」 オレはタメ息をついた。 どうやってミシェルに言い訳をすればいいんだろう? オレは上半身 裸でアリスときたら何も着ていない。 この格好で無実を証明するには優秀な弁護士が何人い ても足りないだろう。




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