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「ごめんね。 私のせいで恋人を怒らせちゃったみたい」 轟音を立てて閉まったドアを見つめながら、アリスが真面目な顔をして言った。 「はぁ? 恋人? ……そんなふうに見える?」 「うん。 どう見ても恋人にしか見えないけど」 「……そう言われると自分でもよく分かんなくなるなぁ……。ミシェルはオレと一緒に仕事を しているメンバーで……」 何から説明したらよいのか迷ったオレは、とりあえず無難そうな仕事の話を出した。 「ちょっとまって!! ――それじゃあ、ランディーは麻薬捜査員だったの?」 アリスの顔色が、みるみるうちに変わった。オレが無難だと思っていた話題は、全くの見当 ハズレだったようだ。 「そうだよ。 でも今だけだ。 普段は気ままにトリュフハンターをやって暮らしてる」 「そうなの……」 アリスは少し考え込んでいたが、思いきったように口を開いた。 「あの人、私を見てびっくりしていたでしょう? ――ついこの間、私、あの人に捕まったの。 麻薬を持ってたのがバレちゃってね」 アリスは何でわざわざオレにこんなことを言うんだろう。 「D・カルロスを知らないかって聞かれたんだけど、私、めんどうな事になるのが嫌で、 ウソをついたの。 そんな人知らないって」 「それじゃあ……」 オレの胸が期待で高鳴るのを見透かすように、アリスは意味ありげに口元を上げてみせた。 「本当はD・カルロスを知ってるの。アイツのアジトも分かるわ」 「どこだ?」 「ウェッジ通りに沿って車で南へ一時間ぐらい進むと寂れた住宅街に出るの。 そこにある古い お屋敷がそうよ。 地下に冷蔵庫みたいなのがたくさんあってその中に麻薬が詰めてあるの」 驚いたことにアリスは麻薬のかくし場所まで知っていた。 「なんでそんなに詳しいんだ?」 オレの問いに、アリスは吐き捨てるような口調で言った。 「私がアイツの〝お気に入り〟だったからよ。アイツが私を借金のカタに連れてった張本人って訳」 「屋敷に人はたくさんいる?」 「そんな事はないわね。 いてもせいぜい二、三人」 「それならすぐになんとかなりそうだ。 教えてくれてありがとう」 「お礼なんていいわ。 それよりアイツをさっさと捕まえて。 秘密をしゃべったのがバレると殺されるわ」 嫌なことを思い出したのだろう、アリスは肩を微かに震わせた。 そして、急に無口になり、コートに手をかけた。部屋を出て行く気なのだろう。 「情報提供代だ」 自分の持っていた札束を全部集めて、アリスに渡した。 「いらないわ。 お金が欲しくてしゃべった訳じゃない」 うんざりした表情で、アリスが言った。もちろん、彼女が言いたいことはわかっている。 しかし、だ。 「受けとれよ。 オレはトリュフハンターの賞金があり余ってしょうがないくらいなんだ。 オレは大金持ちなんだから、いいんだよ」 オレの言葉にアリスは笑った。 「なんだか不思議ね。 三年前は私がランディーにそう言ったのよ」 「あの時オレはチケットをもらっただろ。 だから今度はアリスがもらえばいいんだよ」 オレの言葉にアリスは納得したようだ。 アリスは札束をポケットに入れると外へ出た。 「ありがとう。 またどこかで偶然会うかもしれないけど、その時はみちがえるようなイイ女 になってるように努力するわ。 フフフッ」 アリスは何がおかしいのかわからないが、突然、笑い出した。 「何だよ。別れの挨拶って時に」 「気を悪くしないで。まさか、自分がまだこんなクサイ台詞を言えるなんて、思ってもみなかった から、自然と笑いがこみ上げてきたのよ。本当、おかしいわ」 アリスは笑いながら、オレに体を寄せた。 「――じゃあね」 「ああ。楽しみにしてる」 オレ達は軽い抱擁を交わし、静かに別れた。 ドアを閉めるとオレは、自分自身に言い聞かせるように叫んだ。 「D・カルロス!! 首を洗って待ってろよ!!」 オレはマッハで着がえると電話にとびついた。 「ダイアン、オレだ。 すぐにオフィスに来てくれ。 カルロスの居場所が分かった」 電話をきって、次にミシェルにかける。これは十分注意が必要だ。なぜなら相手がオレだと分かっ たとたんに電話を切られてしまう可能性が大だからだ。名前を名乗らず用件だけを上手に伝え なければならない。 オレは呼吸を整えてミシェルが出るのを待った。 「はい」 「カルロスの居場所が分かった!! オフィスにすぐに来てくれ!!」 返事を待たずに電話をきった。 なんとか上手くいったみたいだ。 「ジュリー!! 行くぞ!!」 オレは大声で言いながら部屋を見わたした。 あれっ? ジュリーがいない……。 『何ぐずぐずしてんの? 遅いと置いてくわよ』 ジュリーはすでに準備バンタンで玄関にいたのだ。 恐ろしいブタである。 「よしっ!! オフィスまで猛ダッシュだっ!」 オレはジュリーを抱えるとアパートの三階の通路から、表の通りへダイブした。 二回転と半ひねりで着地すると警察局に向かってかけだす。 『足痛くない?』 「全然。 階段なんていちいち下りてたら時間がかかるだろっ?」 『あんたさぁ、私の事ブタらしくないって言ってるけど、自分だって十分、人間らしくないわよ』 「細かい事は気にしないっ!!」 オレとジュリーのゴールデンコンビはようやくいつもの調子をとり戻しはじめた。