第2話 二人の出会い

  ライン


オレとジュリーが出会ったのは三年前の夏休みのことで、オレはフランスに旅行に 来ていた。フランス旅行と言ってもオレが行ったのは都会ではなく緑あふれる田舎で、 ある朝、散歩していたオレのそばを、一台のトラックが通り過ぎたことから事件は 始まった。   なんと、トラックから白い子ぶたが逃げ出してきたのだ。その時、オレは子ぶたが トラックから落ちたと思って捕まえようとした訳だが、その子ぶたが逃げる逃げる。 それでもお前は子ぶたか!! と思うようなスピードで逃走しはじめたのだ。  オレは必死に子ぶたを追いかけ、そのまま得体の知れない会場へと乱入した。   ゲートをくぐる時、係員みたいな男が中くらいの大きさのカゴを手渡してくれ、オレ は“これは子ぶたを捕獲するのに役立ちそうだ”とそれを受けとって会場の中へと 入っていった。会場にはいくつも地下室のようなものがあり、子ぶたは次から次へと その地下室に入っては土を掘り返し、中に埋まっていたキノコをガバガバ掘り出しな がら逃走を続けた。オレは無意識にキノコをカゴに入れ、子ぶたを追った。そしてとう とう捕まえ、ふと目の前を見てみるとそこにはGOOLの文字が。                   係員がオレのカゴを取りあげ、向こうの方へ持っていく。 「名前は何だね?」 「ランディー=ロッドマンです」 「パートナーの名前は?」 「? パートナー? ……はぁ、この子ぶたの名前ですか……」 そんなもの知る訳ない。 オレは子ぶたの顔をのぞきこんだ。 「パートナーの名前はジュリー……かな? いや、ジュリーです」 「わかった。 では表彰式に移ろう」 「はぁ? 表彰式、ですか?」 オレがぽかんとしている間に、会場はオレをとり囲むように円を作っていた。 「フランスで最も優秀なトリュフハンターはランディー=ロッドマンとジュリーのペアに 決定だ。私は審査員をはじめて二十年近くなるが、こんなにすばらしいトリュフハンター は初めて見た。彼らの勝利に盛大な拍手を!!」 オレはやっと理解した。 ここはトリュフハンターbPを決める会場だったのだ。 ジュリーが振り出した大量のキノコは、世界三大珍味のひとつのトリュフで……しかも その大会で圧倒的な勝利? トリュフハンターはフランスにしかいないんだから、その                  中でbPをとったということは……もしかして世界一でもあるんじゃないだろうか?   オレは青くなった。単純にうかれてなんかいられない。 「オレ、これからどうしたらいいんでしょうか?」 表彰してくれた老人に尋ねてみる。 「君はどこかのファームから来たのかね?」 「いいえ」 「それじゃあ、これから勧誘がわんさかくるだろうよ。フランス一=世界一なんだからね。 ――ところで君、もうこんな事言って申し訳ないが……どうだい、私のところで働いて みないか」 ――こうしてオレとジュリーはトリュフハンターになった訳だ。 三年たった今やジュリー は人間国宝ならぬブタ国宝として国から保護される身となり、おかげ様でパートナーの オレは昔みたいに生活に困らずに済んでいる。




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