第7話 望まぬ再会

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          休憩に何をしよう、と考えたあげく、街へブラブラと散歩に出た。 時刻はちょうど夜の 一時をまわったところで、はっきり言って出歩く時間ではない。夜の街というのはものすごく 危険なのだ。いつ、アタマのイカレた兄ちゃん達にケンカを売られるか分かったもんじゃないし、                    盗みも多い。その盗みというのも、時にはリンチの果てに着ぐるみ全てはがされる、という                    パターンもある。あいにくオレはケンカは強い方だから、そんな心配はいらないが、なるべく                    ならこの時間帯の外出は避けたいと思っている。                                         しかしだ、こういう場所には麻薬売人がうじゃうじゃいるのだ。                     偶然に何かをつかむことがあるかもしれない。                    しばらく歩いていくと、派手なネオンライトの通りに入った。 ここは売春婦の集まる場所                    で有名なストリートだ。                    「今夜私とどう?」 さっそく香水の香りがプンプンするケバイ女から声をかけられた。 「いや、遠慮しとくよ」 速足で女の前を通りすぎる。まだ通りに入ったばかりなのにこれだ。  ――こういう時はさっさと通り抜けてしまうに限る。 オレは下を向いてひたすら歩き 続けた。 「ねぇ、私を買わない?」 そろそろこの通りを抜けようかというところで、オレは呼び止められた。 無視しても よかったのだが、なんとなく顔を上げてしまい相手と目が合った。 「!! ――ランディー!!」 女はそう言うと固まった。 オレも立ち止まって女を凝視する。  娼婦に知り合いは一人もいないが、自分は彼女を知っているらしかった。  確かに、見覚えはある。 でも、誰だろう? オレは必死に頭を働かせた。                    「――アリス……シンプソン?」                     ようやく出た答えを、信じられない想いで恐る恐る尋ねてみた。                    「…よく分かったわね」                     驚きの余り、何も言えずにいる俺を見て、悲しそうに彼女は言った。                    「――こんな姿をみられたくなかった……」                    「どうして……?」                     本当に信じられなかった。彼女は大金持ちの令嬢だったはずだ。                    「――父の会社が潰れたの」                     そう言うと彼女は手にもっていたタバコをすうっと一口吸った。                      昔の彼女はタバコの似合う女性ではなかったのに。                    「その借金のカタに連れてかれたって訳」                    「そこで売り飛ばされたのか?」                    「違うわ。ヤクザ達の相手を毎日毎日させられるのが嫌で逃げ出したの」                      オレは余分な事を聞いたと後悔した。何と答えたらいいのか分からなくて黙り込む。                    「私を買わない?」                     彼女は真剣に言っているようだった。 オレは彼女の心理が分からない。                    「どうしてオレにそんなこと言うんだ?」                     知らず知らずのうちに、少し怒ったような言い方をしてしまった。                    「だって……今日泊まる所が無いから……」                    「自分の家は?」                    「そんなのないわ。毎晩お客の家に泊まるのよ」                     彼女はサラッと言いのけてタバコをふかす。 オレはこの変わり果てた同級生を見捨てる                     ことはできなかった。                    「オレは君を買う気はない。でも君は今夜、オレの家で泊まることならできる」                    「――ありがとう」                     彼女の声は少し震えているようだった。




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