『それにしても、今日は忙しい一日だったわね』 お互い自分のベッドに入って、眠りに就くまで語り合う。 「そうだなぁ。かなりいろんな検査を一気にやったからな。疲れなかったか?」 『あたしより、病院の先生方のほうがずっと疲れたんじゃない?』 ジュリーに言われて、オレの脳裏にフラフラになった二人の医者の姿が甦った。 彼らは今どうしているのだろう? 精神不安定になっていたりしていないといいが。 「まるでコメディー小説みたいだったなぁ。催眠術までかけちまったし…オレ、バチ当たったりしない よな?」 『平気、平気。悪用しなければ何やっても大丈夫』 ジュリーはキッパリと言い切った。心からそう思っているらしい。 「よく、そこまで言えるよなぁ。勝手に催眠術をかけたのは事実なんだぞ。わかってるのか?」 『はいはいはいはい』 「返事は1回!」 一応、怒ってはみたものの、ジュリーの口答えは毎度のことだ。もはやこれはコミュニケーションの 一つといってもいいと思う。 「ま、なんとか無事に終わったから、よしとするか」 オレは明るく呼びかけたが、ジュリーが返事をしない。 『ねぇ…』 「何?」 『………やっぱいいわ。おやすみ』 ジュリーはクルッと背を向けると、ふとんにくるまってさっさと寝てしまった。 これはジュリーらしくないことだ。彼女は、いったん言いかけた事を途中で止めるようなことは滅多 にしない。なぜなら、いつもは思ったことをそのまま、良い悪いも何も考えずに、ひたすらしゃべっ ているからである。 つまり、こういう時のジュリーは、何か真面目に考え事をしている、と取って間違いないのだ。