「こちらです」 部屋に通され、大きなベッドの前に立つ。指示された通りにジュリーをベッドの上にのせ、座らせる。 その彼女の頭に丸い金属の機械がポコポコと取り付けられていく。 ―――額の辺にふたつ、てっぺんにひとつ、耳のサイドにひとつづつ、そして首に近いところにふたつ。 「大仏の"螺髪"みたいでカッコいいぜ」 『誉めてくれてどうもありがとう。とってもうれしいわ』 「どういたしまして」 そんなことを言い合っている間に、器械の準備が整ったらしい。医者が真剣な顔でオレに言った。 「始めます。」 どうやら彼は相当緊張しているようだ。まぁ、それも無理はない。彼はいまだかつてブタの脳波なんて 調べたこともないだろうし、できることならやりたくもなかっただろう。 医者は器械のスイッチをONに入れた。 「・・・バチバチッ・・・」 「うわぁっっ!」 弱々しい情けない医者の声が部屋中に響き渡った。 「ヒイィッ!どうなってるんだっ!」 彼はオレ達から飛びのいて床にしりもちをついた。かなりうろたえている。しかし、なぜだかうろた えているのは彼だけで、ほかの人は全く驚いていない。 それもそのはず、その他の人というのは、オレとミシェルとダイアンだからだ。 どうやら2人とも こうなるんじゃないかと予想できたらしい。 それにしても、この医者の驚き方にはこっちがびっくり である。確かに脳波計の針が振り切れてさぞ驚いた事だろうが、君がしっかりしていてくれないこと にはどうしようもない。 「大丈夫ですか?」 オレの笑顔の微笑みに、医者はなんとか正気を取り戻したようだ。 「あぁ、はい、もう大丈夫です」 「もう一度やりますか、先生?」 オレの質問に医者はビクッとしながらも、蚊の鳴くような声で返事をした。 「ええ。もう一度やってみて、それでもだめだったら諦めましょう」 いいのだろうか、そんなにあっさり諦めてしまって・・・。 まぁ、とにかく2回目に挑戦してみよう。