第7話 名案?迷案?

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オレはしばし考えた後、すばらしい解決策を思いついた。 「ジュリー、おまえ、IQ185なんだよな?」 『今、結果をみたばっかりじゃない。アタマ大丈夫?』 ジュリーはやや呆れた表情でオレを見上げた。 「だからさ、この銅像に、ちゃんとオレの言ってる事を実行してもらいたいんだけど、おまえなら どうにかできるんじゃないか?」 我ながら、実にナイスなことを思いついたもんだと思う。自分で自分を誉めてあげたいぐらいだ。 『なんであたしが!』 「IQ185なんだろ?」 『……あんたなんか嫌いだわ』   ジュリーは少しむくれている。 「事実だからいいだろ? それより早くいい方法思いついてくれないかな? これはおまえの問題でも あるわけなんだし。 助けてくれたっていいだろう?」 『……はいはい、わかったわよ。その代わり、あたしの言う通りにしてよ』                 「OK。―――で、どうするんだ?」 『そいつに催眠術をかければいいのよ』 ジュリーはサラッとのたまった。さすがは我がパートナー。斬新なアイデアだと思う。しかし…。                  「どうやって?」 『相手の目をじっと見て、ゆっくり語り掛ければいいわ。ちょうど放心状態だから、プロじゃなくても十分 かけられるはずよ』 「ほー」 さすが、ただのブタではない。しかし、こんなことを即座に考えられてしまうジュリーはあるイミ 怖かったりする。 コイツが犯罪者だったらお手上げだ。 オレは医者の前に立って、彼の目線に自分のそれとを合わせた。 「あなたの名前は?」 「………ジョシュ・カルダン…」                 「よろしい。―――では、ジョシュ・カルダン。これから私の言う通りにしなさい。いいですね?」 「…はい」                 「あなたは、ブタのIQ検査を行った。―――インコなどに使う、はめ込み式のパズルでね。そして                 ブタはその検査を楽々クリアして、あなたはその結果を書類に記録した。検査はそれだけで終わった。                  ―――そうですね?」                「…はい、そうです」         医者は人間用IQテストの実施については、口に出すそぶりもない。催眠術とは恐ろしいものだ。                   「よろしい。では、自分の仕事に戻って下さい」 「はい、わかりました」 そう言って、医者はクルリと背を向けると奥のドアに向かって歩き出した。 「ジュリー見ろよ。大成功だ」 『バカッ! 早くアイツを呼び戻しなさいよ!』 「?」 『あんた、まだ催眠術かけたまんまじゃない』 「あっ!そうだった!」 オレはポンと手を叩いた。どうして大事な時に限ってこんなアホなことをしたんだろう。   とにかく彼を止めなければ。 「ジョシュ・カルダン、止まりなさい」 「はい」 彼はすぐに歩みを止めた。催眠状態で本当に良かったと思う。 「ジョシュ・カルダン。これから自分のデスクに戻って椅子に座リなさい。そうしたらもう、いつもの あなたに戻っています。いいですね?」        「はい」 彼は再び歩き出した。そして今度は本当に、ドアの奥へと消えていった。




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