第8話 周囲の反応

  ライン


「ふぅー。なんとか無事に終わったな」 『まったく、最後の最後でドジ踏むんだから…』 ジュリーはブツブツ文句を言っている。オレは結構満足しているんだけどな…。 「だってなぁ、オレは人に催眠術なんてかけたの、初めてなんだぞ」 『じゃあ、人以外ならあるの?』 「……ないよ。いちいち人の揚げ足ばっかりとりやがって…」 オレはジッとジュリーを睨んでみた。当然のことながら、ジュリーも睨みかえしてくる。 …ダメだ、睨めっこじゃ勝てない。オレは大人気ない手を使うことにした。 「そんなこと言うやつには…今日の晩御飯、抜きじゃあぁぁぁ!」 『ふざけてないで、さっさと帰るわよ』 「……ハイ」                  ジュリーは事もなくオレの発言を一蹴した。確かに半分は冗談だったが、半分は本気で言ったのに…。 もう少し優しい返答をしてくれたっていいと思う。 …育て方、間違えたんだろうか…? ふと、頭の中をこんな考えがよぎった。 とすれば、育てたオレが悪いということになる。つまりは、自業自得ということだ。 そんなバカな! オレはガックリと頭を垂れ、IQテストの結果用紙を手に取ると、ジュリーと共に部屋を出た。 「どうだった?」 廊下で待っていたミシェルが声をかけた。IQ検査は集中力がいるから入らないでくれ、と医者に 言われていたのだ。 「これを見ればわかるよ」 オレは持っていた紙を差し出した。ミシェルとダイアンはさぞ驚くことだろう。 「へぇー、185だったの。 やっぱりすごいわね」 「私が思っていたのと同じくらいです」 ちょっと、待ってくれ。なんで"やっぱり"なんだ? なんで"思ってたのと同じ"なんだ?  この二人はどうしてそんな事予測できたんだろう? ―――そういえば、脳波の検査でも少しも驚いていなかった。でもそれはオレだって同じはずだ。 「全然びっくりしてないね」 「だって、ジュリーを見てればわかるじゃない。どう見たって普通じゃないわよ」 当たり前だわ、というような顔でミシェルが言った。ダイアンも頷いている。 オレだって、ジュリーが普通じゃないことぐらい十分承知しているし、なにより、ずっと一緒に 暮らしてきているが、まさかIQ185だなんて思いもしなかった。                  なまじ一緒にいる分、その能力に気づかなかったということだろうか? それとも… オレのIQが低すぎて、ジュリーの能力に気づかなかったんだろうか? 何だか後者の方があっている気がするが、あまり深く考えないことにしよう。




back next

枠top枠novel枠