「ふぅー。なんとか無事に終わったな」 『まったく、最後の最後でドジ踏むんだから…』 ジュリーはブツブツ文句を言っている。オレは結構満足しているんだけどな…。 「だってなぁ、オレは人に催眠術なんてかけたの、初めてなんだぞ」 『じゃあ、人以外ならあるの?』 「……ないよ。いちいち人の揚げ足ばっかりとりやがって…」 オレはジッとジュリーを睨んでみた。当然のことながら、ジュリーも睨みかえしてくる。 …ダメだ、睨めっこじゃ勝てない。オレは大人気ない手を使うことにした。 「そんなこと言うやつには…今日の晩御飯、抜きじゃあぁぁぁ!」 『ふざけてないで、さっさと帰るわよ』 「……ハイ」 ジュリーは事もなくオレの発言を一蹴した。確かに半分は冗談だったが、半分は本気で言ったのに…。 もう少し優しい返答をしてくれたっていいと思う。 …育て方、間違えたんだろうか…? ふと、頭の中をこんな考えがよぎった。 とすれば、育てたオレが悪いということになる。つまりは、自業自得ということだ。 そんなバカな! オレはガックリと頭を垂れ、IQテストの結果用紙を手に取ると、ジュリーと共に部屋を出た。 「どうだった?」 廊下で待っていたミシェルが声をかけた。IQ検査は集中力がいるから入らないでくれ、と医者に 言われていたのだ。 「これを見ればわかるよ」 オレは持っていた紙を差し出した。ミシェルとダイアンはさぞ驚くことだろう。 「へぇー、185だったの。 やっぱりすごいわね」 「私が思っていたのと同じくらいです」 ちょっと、待ってくれ。なんで"やっぱり"なんだ? なんで"思ってたのと同じ"なんだ? この二人はどうしてそんな事予測できたんだろう? ―――そういえば、脳波の検査でも少しも驚いていなかった。でもそれはオレだって同じはずだ。 「全然びっくりしてないね」 「だって、ジュリーを見てればわかるじゃない。どう見たって普通じゃないわよ」 当たり前だわ、というような顔でミシェルが言った。ダイアンも頷いている。 オレだって、ジュリーが普通じゃないことぐらい十分承知しているし、なにより、ずっと一緒に 暮らしてきているが、まさかIQ185だなんて思いもしなかった。 なまじ一緒にいる分、その能力に気づかなかったということだろうか? それとも… オレのIQが低すぎて、ジュリーの能力に気づかなかったんだろうか? 何だか後者の方があっている気がするが、あまり深く考えないことにしよう。