第4話 超☆鈍感

  ライン


「その・・・ハインリヒってのは、随分としつこいんだろ? オレは何をすればいいんだ?」 「そこなのよ、困ってるのは。何回私がデートを断っても、自分は断られる要素なんてないって                   思ってるのよね。だから、私が恥ずかしがってるんだって勝手に解釈して、前にも増して しつこくアプローチしてくるの」 「そりゃヒドイ。そんな奴と張り合えるかなぁ」   オレは段々心配になってきた。 「大丈夫よ。あなたなら、ルックスだってハインリヒに劣らないと思うけど」 ミシェルは心配など微塵もないと言った様子だ。 だが、まてよ。ミシェルは今、何かヘンなことを言わなかっただろうか? 「───え? オレが何だって?」 このオレの問いかけに、ミシェルは少しタメ息をついてから口を開いた。 「簡単に言うとね、あなたは十分、格好が良いってこと。わかった?」 「ええぇ〜、ミシェルまで社交辞令は止めてくれよ。オレ、そういうの苦手なんだよな」 オレは至って真面目に答えたのだが、受話器の向こうでは、再びタメ息をつく音が聞こえた。 「社交辞令なんかじゃないわよ。もちろん、冗談でもないし」 「え、そうなの? で、オレのどこがどうなってそうなるわけ? オレにはサッパリ…」 「───もしかして、あなた自分の顔、見た事ないの?」 ミシェルが呆れたような口調で言った。 「まさか。毎朝、歯を磨くときに見てるよ」 「……じゃあ、聞くけど…あなた、今まで人からカッコイイって言われた時に、全部社交辞令だと 思ってたの?」 「うん」 「………」 オレは即答したが、その答えにミシェルはしばらく黙っていた。 何か言いたげなのだが、この噛み合わない会話をどう繋いでいったらよいものか、迷っている ようだ。オレ自身もズレは自覚しているが、どう収集したらいいのかわからない。 「あなたって、ハインリヒと正反対のタイプだと思うわ。良い意味でも、悪い意味でも」 一息ついてから出た言葉には、どこか含みがあった。 『はぁぁぁぁぁぁぁっ』 足元に居る相棒も、盛大なタメ息をついている。 どうやらオレは、彼女達には当然わかるべきことが、わかっていないらしい。 一体、何だって言うんだろう。誰か教えてくれ…。




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