第7話 ザ・豪邸 

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「ランディー、もうすぐ着くわよ」 「なあ、もしかしてアレか?」 オレは前方に見える巨大な敷地の家を指さした。 「そうよ」 「警察長官の家なんだろ?」 「そうだけど?」 「警察ってそんなに儲かるのか?」 「そんなこと聞かれても、ねぇ…」 「自分だって警察官だろ?」 「長官の懐具合は、一般の警察官にはわからないのよ」 「ふーん。でも、よっぽど警察長官って儲かるんだなぁ。これ、小っさい国の王様の家って 言ってもおかしくないぜ?」 迫り来る豪邸から目をそむけるようにして、オレはミシェルに抗議した。 「あ、言い忘れてたんだけど、ハインリヒは貴族の家系で大富豪でもあるの。だから多分、 代々相続している遺産があるんじゃないかしら」 「ほほーう、大富豪。そりゃまたスゴイ」 あまりの家のデカサに、オレはなんだか笑えてきてしまった。 今、オレ達の車は入口の門を通り抜けようかというところだが、その門からして凄い。    なんと、二匹の白いライオンの像が、"でん"と構えているではないか。 そしてその脇には、二人の門番がいる。 ───ちなみに門の長さは目分量で7m。もちろん横の長さである。もしも縦に7mもあったら、 それは橋ということになるが、この豪邸にはどこかに橋があったとしてもおかしくない雰囲気が あるのだから、恐ろしい。 「入ってもいいかしら?」 「どうぞ」 もともと門は開いていたが、念のためにミシェルは確認をとって、車を中へと進めた。 緩やかなカーブを描きながら美しい木々のあいだを抜けていき、そのままエントランスホールへと 続くスロープをのぼる。エントランスホールに着くと、執事らしき人がドアを開けてくれた。 「ようこそいらっしゃいました。お車は駐車場の方へ移動致しますので、ここでお降りください」 「ありがとう」 まるでホテルである。いや、並のホテル以上と言っても過言ではない。オレが過去に泊まったどの ホテルよりも、確実にこの家の方が豪華である。 半ばボーッとしていると、ミシェルがオレの腕を取って囁いた。 「ランディー、しっかりしてよ。あなたにかかってるんだから」 またしても自分の役割を忘れていたオレに、ミシェルは少し呆れた口調で言った。 オレは大きく深呼吸をしてから、キッと正面を見つめた。 よし、行こう。




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